▼第5話 心の鍵T▼

ピピピッ、ピピピッ・・・カシャッ!!
目覚ましを止め、起きあがって窓のカーテンを開ける。
「今日も雪か・・・」
そう思うと、少し憂鬱になる。
別に誰にそう教えられた訳じゃない。
雪の日だって、楽しい事はある。
だけど、なんとなくそう思う。
「そういえば、夢の中でも雪の日だったな・・・」
めずらしく、夢の内容を覚えていた。
ずっと昔の記憶。ほんの一部だけど、確かに存在した瞬間。
俺がただその時間を隠してただけだ。
何故・・・。
子供が自分の宝物を入れた箱に鍵をかける様に。
大人が世の中への怒り、殺意。それを隠す様に。

何かがその瞬間の回帰を拒む。

その瞬間への帰り方を忘れているだけだろうか?
それとももっと他の・・・

「おっはよぉ〜!!」
突然の瑞穂の訪問により、俺の思考は途切れた。しかし
「おまえなぁ、部屋に入る前はノックぐらいしろよ。」
「したよぉ。賢治が気付いてなかっただけでしょ。」
「返事もしてないのに入ってくる瑞穂が悪い。」
「え〜!!気付かない賢治の方が悪いよ!!」
「どっちでもいいけど、ご飯は冷めちゃうわよ。」
瑞穂の横から明日香さんが乱入してきた。
「あっ、すんません。すぐ着替えていきます。」
「私も着替えてくるよ。」
そういって瑞穂は自分の部屋へ帰っていった。
ふぅ〜。朝からなんでこんなに疲れるんだ?
しかし、瑞穂はなんの用で部屋に来たんだろう?
ワタシノキガエヲノゾキニキタ?
・・・あほかっ!!
着替えよ・・・。

「いただきまーす。」
俺と瑞穂、そして明日香さんで食卓を囲む。今日の朝ご飯は・・・パン?
「あれっ?今日は和食じゃないんですか?」
「うん。たまにはパンもいいでしょ?」
「そうですね。」
「あっ、パンにはこのジャム使ってね。」
そういって明日香さんは『いちご』と(おそらく)自筆でかかれた瓶を差し出してきた。
一瞬ビクッと瑞穂の体がはねたが、また食べ始めた。
なんだろう?このジャムに何かあるのだろうか?
とりあえず俺はそれをナイフですくってパンに塗る。一口食べてみた。結構うまい。
ふつうのジャムだ。変わったところはない。むしろ、市販のジャムより数倍おいしいような気がする。
「これって明日香さん自家製ですか?」
「うん、そう。どう?」
「おいしいです。」
明日香さんは料理がうまい。まだこっちに来て1週間だが、それだけは確証を持っていえる。その料理を手伝ってる位だから、おそらく瑞穂もかなり料理はできるほうなのだろう。
これで天然がなかったらなぁ・・・。
「そう?よかった。」
「ごちそうさま。」
隣を見ると、瑞穂がもう朝食を平らげて、食器をキッチンへ持っていこうとしている。
「今日は早いな。」
いつもは一番最後に食べ終わる瑞穂が、今日は珍しく一番早かった。
「今日は雪ときどき槍かな?」
「それどういう意味?」
「どういうってそういう意味だよ。」
「ひっど〜い!!」
またバトルが始まった。なんで今日はこうも疲れるんだ?
「今週は週番なの。」
「そうだったのか。そりゃ失礼しました。」
「ふふっ。」
またも隣から明日香さんが入ってきた。
「どうしました?」
「ふふふ。ごめんなさい。いや、ね、いつも2人だけだったから、食卓が賑やかになったなって思っただけよ。」
「そうだね。別に会話がなかった訳じゃないけど、1人増えただけでもちがうね。」
「そうですか?」
なんかそういってもらうと、少し照れる。男としてはそういう些細なところで必要とされるなら嬉しい。
「それはそうと、瑞穂、時間はいいの?」
「あっ!!遅れちゃう!!」
そういっててきぱきと後片づけをして
「いってきまーす。」
といって、先に学校へと向かっていった。
「じゃあ僕もそろそろ学校へいきます。」
食べ終わった俺は、別にそんなに急ぐ用事もないけど、すこし早めに学校へ行く事にした。
「はい、行ってらっしゃい。後片づけは私がしといてあげるわ。」
「あっ、ありがとうございます。」
俺は鞄を持つと学校へ向かった。

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