▼第二話 白色の少女

「女神 賢治(おんかみ けんじ)です。こっちにきて日も浅いので、分からない事ばかりですが、どうぞいろいろ教えてやって下さい。」 
俺が学校に通うようになって初日。クラスへの自己紹介も無事終わり、一時間目の用意をしていた。すると、
「賢治君。お久しぶりっ!!」

「えっ、瑞穂!何でこんな所に・・・」
「あ〜、ひどい。せっかく自己紹介の時に手を振ってあげたのに」
「ごめん、気がつかなかった。」
瑞穂とそんな話をしていると後ろから誰かが話しかけてきた。
「よぉ。朝から見せつけてくれるじゃないの。」
「そうそう。瑞穂も彼氏が出来たなら紹介してくれてもいいのに。」
「もぅ。からかわないでよ。賢治君とはそんな仲じゃないよ!!」
「なぁ瑞穂、この人たち誰?」
「俺は章一(しょういち)。よろしく。」
「私は早麻理(さおり)。よろしくね、瑞穂の彼氏君。」
「よろしく。瑞穂の彼氏の賢治です。」
「わ〜、そんな誤解を招くような冗談やめてよ。」
そんなばかげた話をしていると、
『キーンコーンカーンコーン・・・』
「あ、チャイムだ。」
「じゃあ、のろけ話は次の休み時間にでも聞かせてもらうわ。」
「だから違うのに〜」
こうして、初日は何事もなく(?)過ぎていった。

そして放課後。俺は荷物をしまいながら、
「瑞穂、帰るか?」
「ごめん賢治君。私部活あるから。」
「部活?瑞穂部活なんかやってたっけ?」
「うん。バレー部。」
「バレー部?いかにも運動神経鈍そうな瑞穂が?」
「ひどいなぁ。私部長だよ。」
そういえば冬休みにどこか出かけてた様な気がするけど、部活に出てたのか。
「へぇ、じゃあがんばれよ。」
「うん。」
ということで、一人で帰る事になった。

「そういえば、今日E.L.Tの新曲が出たんだったな。」
と思い、帰りにCDショップに行くことにした。
瑞穂と待ち合わせをした駅の前に、商店街があったので、そこへ向かったのだが、
「・・・CDショップはどこなんだ?」
二、三度商店街を往復したが、いっこうに見つかる気がしない。
周りを見れば、来たときにはまだ結構上の方にあった太陽も、かなり沈んで夕暮れの商店街を赤く染め上げている。
歩くのに疲れて、ベンチで休もうとしたとき、
『どん!!』
誰かにぶつかってしまった。
「あ、ごめん。」
「いえ、私こそ・・・」
ぶつかったのは俺と同じ歳ぐらいの少女だった。
その少女が俺の顔を見て、
「・・・もしかして、賢治君?」
といってきた。あまりに突然の事なので返事が出来ないでいると、
「人違いならいいんですけど。なにいってるんだろ私。ごめんなさい。」
「あ、いえ。賢治ですけど。誰ですか?」
「やっぱり賢治君だ。私だよ、さくらだよ。」
さくら・・・?そういえばどこかで・・・。
頭の片隅で、8年前の記憶がよみがえってくる。

白銀の音もない世界で、一人ベンチの上で佇む少女。
8年前にこのベンチで出会った少女。
その少女の名前が・・・

「・・・さくら。」

「そうだよ。思い出してくれた?」
「・・・さくら。そうだ、さくらだよな。」
「うん。お久しぶりだね、賢治君。」

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