▼第一話 再会は雪の色▼

「さ、寒い・・・。」
本州に住んでいた俺には凍りそうな寒さだ。
「しかし、遅すぎだろう・・・」
確か、待ち合わせ時間は午後1時だったはずだ。時計の見ると、もうすぐ長い針は0に着こうとしている。短い針は、3に着くだろう。つまり3時だ。そろそろ寒さで死にそうだ。
最初の降り積もる雪の珍しさも、今はもう、うっとうしくて、頭に積もる雪はもう払いのける気力も起こらない。
体を温めるために喫茶店にでも入ろうと思い、立ち上がったそのとき
「どこかいくの?」
と、一人の少女が話しかけてきた。
「・・・お前を待つのに疲れたから、喫茶店にでも入ろうと思っただけだ。」
「えっ、今3時だよね?早くつきすぎたの?」
「・・・さてここで問題です。正解してもなにもでないのであしからず。」
「うん。」
「13時は午後何時でしょう?」
「・・・3時。」
思わず、こけそうになった。
「13時は午後1時だ!!」
「あっ、そうなんだ。ごめん。もしかしてずっと待ってた?」
「もしかしなくても待ってた。」
「やっぱり・・・」

もう、あきれて物も言えない状態だった。
「本当にごめん。はい、あったかいコーヒー買ってきた。遅刻のお詫び。」
そういって彼女から、凍りそうな俺の手にはあつく感じる程よくあたためられた缶コーヒーが手渡された。
「・・・それと、8年ぶりの再会のお祝い。」
俺は、冷たくなった手の中でそれを転がして、しびれるような感覚に浸りながら
「8年ぶりの再会祝いにしてはわびしいな。」
「いらないなら飲まなくてもいいよ。」
「いや、もらっとく。もったいないから。」
そういって瑞穂に取られそうな缶コーヒーを後ろに隠した。
「ふふっ、賢治君そういうところは8年経っても変わらないね。」
「そういう花子も全然変わってないな。」
「もうっ、私、花子なんて名前じゃないもん。」

「あれっ、次郎だったっけ?」
「うー。私、女なのにぃ!賢治君、私の名前忘れたの?」
「さすがにこれだけ外にいると体が冷えるな。早くどこかに入ろうぜ。」
「うー。私の名前は?」

俺はそう言い続ける女を尻目に、立ち上がり、
「先行くぞ、瑞穂。」
「ま、待ってよ。私もいくよー。」
瑞穂は走り寄ってきて俺の横を歩く。8年ぶりのいとことの再会、それを祝うかのようにいつのまにか雪もやんでいた。

プロローグへ戻る■第二話へ■

■番外編-mizuho-へ■

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送