▼Another Story of Silver town -mizuki-▼

彼女がいなかったら今の私はいなかった。
自分で言うのもなんだけど、私は周りより頭が良かった。
先生達には期待されていた。
だけど、そんな私を周りの同級生はよく思ってなかったんだろう。
友達なんていなかった。いじめもあった。
靴が無くなる、机に花が飾られるなんて当たり前で
たちの悪いものではいすに画鋲が張り付けられてたり、
体育の授業の時に服が細切れになってたなんて事もあった。
だから私は成長して行くに連れて冷めていった。
人を信じる事を忘れていた。
先生に相談しても「あなたが人を拒絶してるんじゃないの?もうちょっと
他人を理解してあげないと」などときれい事をいって済ませていた。
そして周りには味方がいなくなった。
この高校に入った理由も、中学に通ってた時の顔見知りがあまり入ってこなかった事。
入学式。
教室にはいると、前にいた彼女が話しかけてきた。
「…ごめん、よかったらシャーペン貸してくれない?」
「…はい。」
それから彼女は私をじっと見つめてきた。
「…他になにかあるの?」
「うわぁ。美人さん発見。」
なにこの子。変な子。関わらないようにしよう。
「ねぇ、友達になってくれない?」
「なんであなたの友達にならなくちゃいけないの?」
「う〜ん、一目惚れっていうのかな。友達になれたら良いなって思って。」
「…無理よ。私、あなたと友達になろうと思わないもの。」
「うっ、ふられちゃった…。」
「あら、あなたまだ生きてたの?」
来た。中学の顔見知りだ。名簿見たときにいやな予感はしたんだ。
「早く死んでくれれば良いのに…」
「ちょっと、言い過ぎだよ。」
「…あんた誰よ。」
バカね。私なんかに関わるなんて。
「瑞穂。早麻理ちゃんの友達候補。」
誰が候補だ。ちゃん付けで呼ぶな。
「へぇ…。」
「へぇ…じゃなくて、早く彼女に謝りなさい。」
が、彼女らは何も言わず、席へ行った。
「あなたもいじめられるわね。どうして出しゃばったの?」
「だって、私の友達だから。友達を貶す人は許さない。」
「…知らないからね。」
それから、標的は私と瑞穂の二人になった。
頭の悪い子だ。自分からやっかいごとにつっこむなんて。


ある日、集金した臨海学校の積立金が無くなった。
数時間後、私の鞄から集金袋だけ見つかった。私が容疑者にあがった。
もちろん、私が盗んだ訳じゃない。おそらく彼女たちの陰謀だろう。
「正直に言いなさい。あなたが盗ったんでしょう?」
「いえ、私は…」
「じゃあ、なぜあなたの鞄から集金袋が出てきたの?」
「それは…」
そのとき、職員室のドアが開いた。
「早麻理ちゃんのせいじゃありません。」
瑞穂だった。
「ちょっとあなた。今早麻理さんと話してるの。早く出て行きなさい。」
「なんで早麻理ちゃんだけが疑われるんですか?」
「それはあなたも知ってるでしょう?」
「だけど、それだけで早麻理ちゃんが犯人と決めつけるのはおかしいです。
今日はずっと早麻理ちゃんと一緒にいました。だけど、早麻理ちゃんは集金袋なんて
持ってなかった。第一、早麻理ちゃんはそんな人じゃありません。」
一緒にいたって、ただ、あなたがずっと後をつけてただけでしょ。
「あなたが見てないときに盗った可能性もあるでしょう?」
「…どうしてそんなことが言えるんですか?なんで早麻理ちゃんを信じてあげないんですか?
ずっと、違うって言ってるじゃないですか。」
そのときの瑞穂はすこし頭の悪い変な子じゃなかった。
人を信じるということ。簡単そうに見えてそう簡単じゃない。
人は無意識のうちに誰かを疑ってしまう。
他人をそう決めつけてしまう。
だけど、彼女は違った。ずっと信じている。疑うことを知らないなんて事はないだろう。
だけど、信じてくれた。かっこいいと思った。
「先生、こいつらが盗ったみたいです。」
次に入ってきたのはクラスで瑞穂の横の席にいた章一と、
泣いている彼女たちが、お金の入っている袋を持って来た。
「ちょっと脅したら、自供しました。」
「本当なの?」
彼女たちは小さくうなずく。
「…すいま…せん。」
泣きながら深くわびを入れる。
「わかった。早麻理さん。ごめんなさいね。」
「いえ、失礼しました。」
そして職員室をでた。
「あぁ、怖かった。私、先生に文句言うの初めてなんだ。なんかすっきりした。」
「…どうして?私の事なんて放っておけばよかったのに。」
そうすれば、幸せに学校生活が送れたのに。
「だって、友達でしょ。って言っても私が勝手に思ってるだけなんだけど。
友達を助けるのに理由なんていらないと思うな。」
「そう。でも早麻理ちゃんなんて呼ばないで。」
「あ、ごめん。」
「…早麻理って呼び捨てでいいわよ。友達でしょ。」
「えっ。それじゃあ…」
「助けてもらった借りもあるからね。」
「わーい、やったぁ。」
瑞穂は本気で喜んでいた。
彼女なら…。ずっと私を信じてくれた瑞穂なら、私も信じてみたい。
友達になりたい。そう思った。

それから、彼女たちは私たちをいじめることはなくなった。
章一がいるからだろう。だけど、それだけではない。
ぎこちないが彼女たちと挨拶ぐらいはできるようになった。
彼女たちの中で何かが変わった。
私も変わろうと思う。
人を信じるということ。そんな当たり前のこと。だけどずっと忘れてた大切なこと。
少しずつだけど、瑞穂がいてくれるから。頑張ろうと思う。
そしていつか、瑞穂に胸を張って親友と呼ばれる日が来ることを強く願う。


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